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「作 ヤマザキ トウコ」と記載してください

 

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企画集団 0 Gravity 第二回公演

3F 17号室」

            作 ヤマザキ トウコ

登場人物

女  臨月の妊婦 精神薄弱

新人 どうやら新人 純粋無垢

教官 どうやら教官 男か女か 

善か悪か

 

舞台装置

舞台上手奥にベッドが置かれている

ベッドの横、上手端に立派な椅子

その上に「3F 17号室」と書かれた

プレートが置かれている

丸椅子とパイプ椅子 1脚ずつ

サイドテーブルに

ノートPCが置かれている

 

暗い舞台の上

どこかから

prelude』が響いてくる

 

舞台上手にスポットライトが落ちる

 

その中に「3F17」と書かれた

プレートが置かれている

 

舞台下手にスポットライトが落ちる

 

その中に新人の姿

気づいたように前を向き

その後、舞台中央に向かって

訴えるように歌っている

 

舞台中央にスポットライトが落ちる

 

その中に臨月の妊婦が立っている

新人は女に訴えるように歌っている

女は、新人には気づかない

 

溶暗 

 

歌声カットアウト

 

明転

 

舞台上手奥のベッドに女が寝ている

新人 が手にクリアファイルを

持って、立っている

少し困った顔で女を眺めている

しばし 間

教官 が下手から

手に何枚かのクリアファイル

(カルテのように見える)

と黒いノートを持って入ってくる

 

教官 「おう」

新人 「(驚いて)あ!(一礼)」

教官 「(手で制しながら)どうだ?」

新人 「寝てます(女を見て)」

教官 「ん?(ベッドを覗き込んで)

おぉ。寝てるな」

 

二人とも 寝ている女を見る

教官 ベッドサイドに置かれた

PCに近づいて

 

教官 「血圧138の82」

新人 「(慌ててメモ用紙を出す)」

教官 「少し高いな。プルス72」

新人 「(メモる)」

教官 「ま、バイタル安定してるな。

間隔は…

(紙を見ながら)7分間隔だな。

    今日、予定日だしな。

    このまま、行くだろう。」

 

新人 女を見ている

 

教官 「で、どうだ?」

新人 「よく寝てますね」

教官 「そうじゃなくて」

新人 「え?」

教官 「お前のことだよ」

新人 「あぁ…。そうですか…

(ちょっと落ち込んで)」

教官 「…んだよ、それ」

新人 「すみません」

教官 「いや、謝られても」

新人 「え!ごめんなさい」

教官 「はぁ?」

新人 「あぁっ!すいません!」

教官 「いや、謝られても」

新人 「えぇ?!(驚いて)」

教官 「はぁ?」

新人 「えぇ?!」

教官 「…はぁ?」

新人 「えぇぇ!?」

教官 「はぁ?!」

新人 「え?えぇ?!えぇぇぇっ??」

 

教官 いらっとして 舌打ち

 

教官 「どうするんだ、早く決めろ!」

新人 「…(頭を抱えたり。挙動不審)」

教官 「こんなギリギリになって

何を悩んでるんだ」

新人 「…なかなか決心がつかないんです」

教官 「はぁ?」

新人 「…すみません」

教官 「いや、謝られても」

新人 「えぇ!(驚いて)」

教官 「はぁ?」

新人 「えぇ!?」

教官 「…はぁぁ??…(舌打ち)

もういい。とりあえず、座れ」

新人 「はい」

 

教官 黒いノートを広げながら

 

教官 「わかってるだろうが、

一応、『流れ』を説明するな。

これから『実習』を始める。

    (女をあごで指して)

コイツでいいんだな?」

新人 「…(女を見ている)」

教官 「『実習』が終わったら、速やかに

レポートを提出してもらうからなー

よし、じゃあ早速手続きを」

 

教官 黒いノートに

何か書き込もうとする

 

新人 「あのっ」

教官 「えぇ!!

    お前さん、初めてなのか!?」

新人 「…はい」

教官 「随分のんびりしていたもんだなぁ!

    このご時勢に

いまさら、『実習』とは

ははは!いやぁ、珍しいものを見た

    (まじまじと新人を見つめる)」

新人 「…」

 

新人、寝ている 女 を見ている

 

教官 「…今なら、変えてやってもいいぞ」

新人 「(驚いて)え!」

 

教官 新人を見ながら

 

教官 「初めてなんだろ?」

新人 「…はい」

教官 「初めてがコレじゃ、

キツイ『実習』になるぞ」

 

教官 手に持っている

クリアファイルをざっと見ながら

 

教官 「手続きは、いろいろと

面倒だけどなぁ。

まぁ、出来ないこっちゃ無い。

(クリアファイルを見せながら)

こっちのほうが断然いいな。

それからこっちは…」

新人 「(食い気味で)いや、あの」

教官 「なんだよ」

新人 「いえ、その…」

教官 「しばらくソバにいて、

情が沸いたか?」

新人 「いや…」

教官 「情で選ぶもんでも

無いと思うがなぁ」

新人 「…」

教官 「本来、今更変更ってのは、ナシだ。

    そもそも、お前が選んだんだしな。

だけど、今回は最初だし、

もっとイージーなのを用意して

やろうという、

粋な計らいじゃないか」

新人 「でも…」

 

女がいきなり苦しそうに呻き始める

(陣痛)

新人はたじろいで

オロオロとしてしまう

 

教官 「来たか」

 

苦しそうな様子は

悲鳴にも似た状態となり

女はうわ言を言いながら泣いている

オロオロしている新人を横目に

教官が慣れた様子で押さえ込んで

沈静化させる

(その様子は医療行為のように見える)

女はまた、ベッドで寝はじめる

 

教官 「…落ち着いたようだな」

新人 「……」

教官 「待ったなし、か。

(新人をチラリと見ながら)

無理することはない。

       (クリアファイルを

新人に見せながら)

この中から新しいヤツを、

お前が選べ」

新人 「新しい人を?」

教官 「そうだ。早く決めろ」

新人 「…この人はどうなるんですか?」

教官 「それは、お前が気にすること

じゃないだろう?

他の、もっと慣れてるヤツに

任せちまえばいい」

 

しばし沈黙

 

新人 「…この人は」

教官 「ん?」

新人 「この人は、どうしてこんなに

悲しそうなんでしょうか」

教官 「…さあな。

お前の方が詳しいんじゃないのか?」

新人 「…よく、わからないんです」

教官 「理解できるだけの『脳』がない、か。

(やや間)気になるんなら本人に

聞いてみればいいんじゃないのか?」

新人 「え?」

教官 「カウンセリングだよ。

    かの有名な心理学者

    カール・グスタフ・ユングは

こう言った。

『あなたが向き合わなかった問題は、

いずれ運命として

出会うことになる』」

新人 「…」

教官 「よく見ていろ」

 

教官 一枚のクリアファイルを持って

寝ている女をベッドの脇に座らせる

女はまだ寝ている

      

教官 「これから、君に質問をするよ」

女  「(まだ寝ている)」

教官 「なるべく正直に、答えるんだ」

女  「(寝ながら頷く)」 

教官 「答えたくない質問には答えなくても

よろしい。いいね?」

女  「(うっすら目をあけて)…はい」

教官 「よし」

 

教官 メモ帳とペンを新人に渡して

 

教官 「ん」

 

新人 頷いてメモを取る準備 

女は正気なのかわからない様子で

質問に答えていく

女は 何もない空間をうっとりと

見つめている

   教官 クリアファイルを見ながら

 

教官 「君、名前は?」

女  「…真実子」

教官 「マミコ」

新人 「マミコ(メモる)」

教官 「良い名前だな」

女  「(誰もいない空間に)

本当?うれしい。」

 

   女 誰もいない空間に

   話しかけている

   男二人組みにナンパされている様子

 

女  「えー可愛いとかっ!

    そんなことあんまり

言われたことないよー」

新人 「(メモ取りながら)

言われたことない」

女  「(小声で教官に向かって)どうしよ!

    めっちゃイケメンなんだけど!

 (イケメンを見ながら)

めっちゃイケメン!

(隣の男に)めっちゃ普通

(イケメンを見ながら)

めっちゃイケメン」

教官 「…イケメン?」

新人 「(メモ取りながら)イケメン?」

女  「(イケメンに)えー?今?

暇だけどー。

    今から?カラオケ?

(教官に向かって)どうする??」

    

教官 首をかしげる

新人は真面目にメモを取っている

 

新人 「(メモ取りながら)カラオケ」

女  「(小声で教官に向かって)

あたし、イケメン!

    あんた、普通の!」

 

教官 肩をすくめる

 

女  「ねぇ!あたし、彼から

    「付き合おっか」って

言われちゃった!」

教官 「ほぉ?」

新人 「(メモ取りながら)展開速い」

女  「彼ねー優しいの。

    会いたいねって言うとね

    時間作って、会ってくれるんだよ」

教官 「ほぉ」

新人 「(メモ取りながら)会ってくれる」

女  「忙しいみたいで、

あんまり長い時間は、一緒に

いられなかったりするんだけどね」

教官 「ほぉ」 

女  「お金ないから

    どこにも連れてって

あげられないけど、

    マミコの顔が見られれば、

    それだけでいいんだ

なんて言うの!」

教官 「ほぉ」

女  「だからね、お金は気にしないで!

あたしが行きたいんだからって

今日は映画見て、

ご飯食べてきたんだよ」

新人 「(メモ取りながら)…映画、ご飯」

女  「彼といろんなとこ行きたいから

バイト頑張るの!」

新人 「(メモ取りながら)バイト頑張る」

教官 「(新人に)…たかられてるな。

イイ鴨だ。」

新人 「…」

教官 「幸せか?」

女  「(彼向かってに言うように)

うん。あなたといられれば、

あたしは幸せだよ」

新人 「(メモ取りながら)…幸せ」

女  「ねぇねぇ!聞いて!

あたしの誕生日にね」

教官 「誕生日?

(クリアファイルを見ながら)

1997年3月25日…

今、17歳か」

女  「そう!

17回目の記念日だねって。

だから、お祝いしようねって!

彼が言ってくれたの!」

新人 「(メモ取りながら)お祝い」

 

教官 新人の様子を伺っている

新人 メモを取っている

 

教官 「お祝い、してもらったのか?」

女  「うん。

初めて、一日中ずーっと、

一緒にいられたんだ…」

教官 「……」

女  「富士急行って、ドドンパ乗ったの!

    隠してたけど

メッチャ怖がってたでしょ!

バレバレだからね。

    あたしはぜんぜん

怖くなかったもんねー

でもでも戦慄迷宮はダメ!

絶対もうヤダ!

  お化け怖いの!マジ、ハンパ無い!

    その後、行ったレストラン

素敵だったなぁ。

    デザートのプリンアラモード!

すっごい美味しかった!

 それから…それから…

 夜、誰もいない公園で、

花火を並んで見たね。

 ちょっと寒くて

「寒いね」って言ったら

 じゃあ、もっとそばにおいでって

 それで…はじめてキスをして…

 それから…そのまま…」

      

女 目が据わっている

    

女  「(上の空で)あの日朝帰りして、

ママにメッチャ怒られたんだよ。

ママに説明してって言ったのに

ぜんぜん助けてくれないんだもん」

新人 「…」

 

新人 メモを取るのをやめてしまう

教官 その様子を見ている

 

教官 「(ため息)…ここがどこだか、

わかるかい?」

女  「え?…わかんない」

教官 「君は、なぜここにいるんだ?」

女  「な…ぜ?」

教官 「今日は何月何日か、わかるか?」

女  「今日…?」

教官 「今日は、2014年12月7日」

女  「じゅうにが、つ…な、の、か?」

教官 「そう。12月7日」

 

女 思い出したようにお腹を触る

 

教官 「もう、すぐだな」

女  「あ…いや…いやああぁぁぁ」

教官 「!」

 

女 教官に飛び掛って

 

女  「どうして?」

教官 「なんだ」

女  「よろこんでくれないの?

あたしは?どうしたらいいの?」

教官 「痛い!離せ」

 

女 教官を叩きながら

 

女  「なんで、そんなこと言うの?」

教官 「痛いだろう!」

女  「お…お…。

いやだっ!そんなのっ!!

教官 「やめろ!」

 

教官 女の手を振り払う

 

女  「あっ!

(彼が去ったのを目線で表現)

ひとりにしないでっ!

置いてかないでっ!

どうして!

    彼、いなくなっちゃったぁ

    ひとりにしないでよぅ!

ママに言えない…。どうしよう。

何で何でなんでぇぇ!

こんなのヤダよう!

あたし…ひとりで…?

どうしたらいいの?

どうしたらいいの?

誰か…誰かたすけてぇぇぇ!!!」

新人 「もう、もうやめてください!」

      

新人が耐えられなくなって

女を抱きかかえる

教官が 女の額に手を当てると

女はすっと眠りに落ちてしまう

 

新人 「…」

教官 「よくある話だよ」

新人 「ちょっと!それ、どういう…!!」

 

新人 教官に殴りかかる

 

教官 「待て待て。お門違いだろう?」

 

新人 がっくりと肩を落として

 

新人 「ただ、ツライだけなんですね」

教官 「今は、な」

新人 「なにか、

出来ることはないんでしょうか?」

教官 「今の、お前にか?」

新人 「…関わらない方が

この人のためなのか」

教官 「…残酷かも知れないが

    今のお前に出来ることは何もない」

新人 「…(落ち込む)」

教官 「(見かねて)1つ有るとすれば。

そばにいてやることだ」

新人 「そばにいる…?

    それをこの人は

望んでいるのでしょうか…」

教官 「はぁ?

お前がコイツを

選んだんじゃないのか」

新人 「…」

教官 「なぜ、コイツにこだわるんだ」

新人 「…気になったんです、とても」

教官 「なぜ?」

新人 「なぜでしょうか」

教官 「こっちが聞いてるんだよ」

新人 「…理由なんて、ないんです。

    でも、この人だって、

気がしたんです。

    …寂しそうだったから?

    いや、誰かがいてあげないと

心配だったから?

    役に立てるような気がしたから、

かな…。

    ずっと、待っていたから?」

教官 「そんな理由で、

厄介ごとを引き受けるのか?」

新人 「厄介ごと?

そんな言い方しないでください」

教官 「じゃあ、早く決めろよ!」 

新人 「でも、この人にとって

負担になるなら…」

教官 「あぁ!もう!面倒くさいなぁ。

    じゃ、もういい。やめてしまえ!

代わりを手配するからな!」

新人 「ま、待ってください!」

教官 「なんだよ」

新人 「それでもっ、この人は

今まで守ってきてくれました!」

教官 「守る?何をだ」

新人 「…」

教官 「ただ、タイミングを

逃しただけだろう」

新人 「…何の、タイミングをですか?」

教官 「…『殺す』タイミングを、だよ」

 

新人 女 を見る

突然 女が起き上る

 

女  「…」

新人 「…!」

 

二人 しばし見つめあう

教官は静かに見ている

 

女  「…あなた、だれ?」

新人 「…お、お身体大丈夫ですか?」

女  「…赤ちゃんが、いるんだってさ」

新人 「…はい」

女  「…全然、わかんない」

新人 「…何が、ですか?」

女  「全然、わかんないのに、

みんな、『どうするんだ』って。

あたしに『どうするんだ』って

聞くの。

そんなの、わかんない。

わかんないよ…。

どんどん大きくなる…!

怖い…(頭を抱えてしまう)」

新人 「産みたくないんですか?」

女  「…!」

 

女 驚いたような顔をしている

 

女  「うぅ」

新人 「いらないんですか?

迷惑なだけですか?」

女  「うぅぅっ」

 

新人 すがるように 女を見ている

 

女  「あたしだけ…?

あたしだけで…?

あたし、一人で…?」

新人 「あなたは一人じゃない!」

女  「(泣いている)」

新人 「一人じゃない…」

女  「あたしは…何をウムの?」

新人 「え…?」

女  「あたし、どうなっちゃうの?

何をウムの?!怖い!」

 

女 新人 の肩を揺らしている       

新人 女から逃れようとする

 

教官 「逃げるのか?」

 

照明 前方からのスポットに切り替わる

 

教官 の声に反応して

女 と 新人 の答えがリンクする

 

女  「逃げたい」

新人 「逃げたい」

 

教官 「お前が決めたんじゃないのか」

 

女  「そうだけど」

新人 「そうだけど」

 

教官 「何をごちゃごちゃ言ってるんだ」

 

女  「だって」

新人 「だって」

 

教官 「もう時間がない」

 

女  「そんな」

新人 「そんな」

 

教官 「腹を括れ!」

 

女  「怖い」

新人 「怖い」

 

女 お腹を抱えてうずくまる

 

照明 地明りに戻る

 

女  「うぅっ!」

教官 「(時計を見て)時間だ」

女  「痛いっ痛いよう!!!」

 

新人 呆然と立っている

教官 出産の準備をしながら 

 

教官 「何ぼさっと立ってんだ!」

新人 「ど、どうしたらいいんですか」

女  「いたぁぁぁい!怖いっ怖いよう!!」

教官 「それは、お前が決めるんだ」

新人 「でも、この人はっ」

教官 「そんなことは、どうだっていい!

    お前は、お前はどうしたいんだ」

新人 「それは」

教官 「早く!」

新人 「…この人を困らせることになるのは

嫌だ…!」

教官 「今更…?それがお前の答えか!?

…マズい、

赤ん坊の心拍が落ちていくっ…」

女  「いたぁぁぁい!

怖いよう こわいよう!」

教官 「(新人に)このままじゃ、

赤ん坊が『空っぽ』になるぞ!」

新人 「…!」

教官 「おい!死なせるつもりか!」

新人 「!」

教官 「(女に)しっかりしろ!

    このままじゃ、死ぬぞ!」

女  「うぅ!」

教官 「今まで腹の中で生きてきた、

お前の赤ん坊だろう!」

女  「!…あた…あたし…の」

教官 「(両方に)覚悟を決めろ!」

女  「あたしの、あたしの…

あたしのあかちゃぁぁぁん!!

(赤ん坊を呼ぶように叫ぶ)」

 

新人 決心したように

女 の元へ走り寄る

 

暗転

 

暗転の中 女の叫び声が聞こえる

一瞬の静寂の後

prelude』が流れてくる

 

舞台中央のスポットが点く

 

サスの中に女が立っている

 

女  「…」

 

教官 暗闇の中から声だけで

 

教官 「おめでとうございます。

    2712グラム。

元気な男の子ですよ」

 

明かりの中に

タオルでくるまれた

赤ん坊が差し出される

スポットの中に新人が入ってくる

 

新人 「おかあさん…」

女  「…ごめんね。

ごめんね…」 

新人 「…(静かに首を横に振る)」

 

女 赤ん坊を抱きしめている

教官 は暗闇の中から声だけで

 

教官 「謝らないでやってくれないか。

自分で選んだ『人生』だ」

 

女は 静かに 赤ん坊を見つめている

新人は 静かに 女を見つめている

二人が 「ありがとう」と

呟いたように見える

 

prelude』の後半歌い始める 

 

舞台上手のスポットライトがゆっくりと点く

 

教官(姿は見えなくて良し)

が 椅子の上に置かれた「3F17

と書かれたプレートをひっくりかえす

そこには「LIFE」という文字が

 

教官 「実習後のレポート、

楽しみにしているよ。

    しっかり生きろ

(録音したもの再生)」

 

舞台上手のスポットが徐々に消える 

 

女 ゆっくりとまっすぐ前を向く

新人 女の目線を追うように

まっすぐ前を見る

prelude』の最後の響きが聞こえる

 

一瞬の間

 

舞台中央のスポットライトが消える

 

                   終

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[上演時間 約20]

 

作中の出産予定日は、初演当日の日付です。

予定日を上演当日の日付にして、

女 の誕生日を計算しなおすと

良いと思います。

ちなみに、上演日の大体10ヶ月前を

誕生日と設定して、

誕生日で17歳になるように…

 

    必要な小道具☆

・「3F17」のプレート

 Fの部分を回転させると

  「LIFE」になるように

  デジタル数字のように描く

その他はゲネプロ動画を参考に…

 

読んで頂きありがとうございました!